婚活の記録 part 4
その瞬間、爆速で頭を回転させた。婚活が始まる前、家族と結婚相手について話し合いは済ませていた。その条件を照らし合わせる。...問題はなさそうだ。性格や職業、相手家族もOK。今の僕の収入は決して多くはないが、貯蓄も含めると結婚費用は賄える。
ただ...実家のことを考えた。僕の実家は田舎にあり、祖父の代から続く家業をしている。これまで家族との折り合いはあまり良くなく、実家は継がなくてもいい、家族と離れて生活しても問題ない、という条件を得ていた。事実、仕事のためでもあるが家族から離れるために、僕は今故郷を捨てて全く縁もゆかりもない地方に住んでいるのだ。だが、結婚するとなると故郷に戻るのか、それとも離れるのか。長男である自分はすべての責務を放棄して良いのかと逡巡した。
だが、なによりも...
眼の前にいる彼女以上に素晴らしい女性と出会えることは、二度とないだろう。このチャンス、みすみす逃してはならない。
「結婚しよう。君をきっと幸せにするから」
まさに清水の舞台から飛び降りる覚悟で口にした。もう引き下がれない、引き下がってなるものか。